E制作室 納品サンプル 市場調査レポート。題材は実在市場ですが、特定の事業者への推奨・非推奨を意図するものではありません。

Market Research Report / Sample

パーソナルジム市場への
新規参入評価

「これから小規模パーソナルジムを1店舗出したい」というご相談を想定し、参入判断に必要な事実だけを公開情報から集めたレポートです。

調査時点 2026年8月9日
情報源 公開情報のみ / 全数値に出典URLと取得時点を明記

0このレポートの読み方

数字そのものより、「その数字がどこまで信用できるか」のほうが判断を左右します。当方は全ての数値に信頼度を付けています。

区分意味本レポートでの扱い
A 官庁統計、または調査手法・サンプル数を開示している調査会社の一次発表 判断の土台にしてよい
B 民間集計で手法が一部だけ開示されているもの、企業IR 参考にするが、単独では根拠にしない
C 出典が「業界調査」等で止まり、原典に到達できないもの 採用しない。本文では「使えない数字」として明示
なぜCを載せるのか 検索すると最初に出てくる数字ほどC区分であることが多いためです。「その数字は根拠が確認できないので使わないほうがよい」と分かること自体が、調査の成果になります。

1結論:参入可否の判断材料

ご判断はご依頼者さまが行うものです。当方は「判断を変えうる事実」を提示します。

2,368

全国のパーソナルジム施設数

矢野経済研究所/2025年8月時点

49.3%

大手8ブランド店舗の東京都集中率

コーチム悉皆調査/2026年7月

9.6%

全国1,741市区町村のうち出店済みの割合

同上

47.6%

フィットネス関連企業のうち赤字または減益

帝国データバンク/2024年度

参入を止める方向に働く事実
  • フィットネス関連企業の47.6%が赤字(31.7%)または減益(15.9%)。市場規模は過去最高を更新見込みなのに、企業の収益は悪化しています(帝国データバンク/2024年度)。
  • マンツーマン指導の女性市場が前年比 -23.0%。長らく主力だった顧客層が離れています(ホットペッパービューティーアカデミー/2025年下期)。
  • 男性のマンツーマン指導の月額支出が前年から約1,400円減少。価格を上げにくい環境です(同)。
  • 大手ブランドでも純減が起きています。RIZAP 129店(2021)→103店(2026)、Chicken Gym 30店超→3店、BVEATSは運営会社が負債約2億3,000万円で破産(2026年6月)。
  • 公的機関の実測では平均営業利益率がマイナスです。日本政策金融公庫の経営指標調査(2024年8月・n=74社)で平均 -11.1%、損益分岐点比率114.5%。開業支援業者が提示する「利益率30〜50%」とは方向が逆です(詳細は§8)。
  • 2026年5月、消費者庁がパーソナルトレーニングの事故調査報告書を公表しました。事故196件のうち193件が指導そのものに起因し、41%が治療1ヶ月以上。4大臣・長官宛の意見が出ており、今後の規制新設リスクがあります(詳細は§9)。
参入を後押しする方向に働く事実
  • 全国1,741市区町村のうち大手が出店しているのは168(9.6%)のみ。地方は明確に未開拓です(コーチム/2026年7月)。
  • レビュー密度が地方のほうが高い。新潟の2店舗が平均147.5件に対し、東京399店は平均64.1件。店舗あたりの需要は地方のほうが厚いことを示唆します(同)。
  • 日本のフィットネス参加率は約4.5%で、米国23.7%の1/5。市場そのものは伸びしろがあります(RIZAP決算説明資料ほか)。
  • 男性市場は3年連続で拡大(+5.2%)。20代男性が利用者・経験者ともに全年代最多です(ホットペッパービューティーアカデミー/2025年下期)。
この2つを両立させる読み方 「市場が飽和しているか」という問いには、全国では未飽和・東京では飽和としか答えられません。東京都は大手8ブランドだけで399店が集中し、対大阪8.1倍・対愛知13.8倍という異常な偏りがあります。したがって参入判断は「市場に入るか」ではなく「どこに、誰向けに出すか」で決まります。また、顧客層の重心が女性ダイエットから20代男性ボディメイクへ移っている点は、商品設計そのものに関わります。

2市場規模
「いくらの市場か」に答えられない構造

最初にお伝えすべきことは、この市場には信頼できる金額データが存在しないという事実です。

公的統計が2024年12月で消滅しています 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」は2024年12月調査をもって終了し、2025年1月分から総務省「サービス産業動態統計調査」に統合されました。しかし新統計はサービス産業全体の粒度で公表されており、フィットネスクラブ業種別の数値は確認できません。2025年以降のトレンドを官庁データで語ることはできません。

出典:経済産業省 特定サービス産業動態統計調査(調査終了告知)総務省 サービス産業動態統計調査(いずれも2026年8月9日確認)

「フィットネス市場規模」は3つの別物が併存している

同じ「市場規模」という言葉が、まったく違うものを指しています。混ぜて引用すると結論が壊れます。

定義集計の対象最新値時点信頼度
A. 帝国データバンク 主要運営企業の売上高ベース 約7,100億円 2024年度(見込) A
B. Fitness Business誌 民間商業フィットネス施設 4,886億円 令和5年(2023年) B
C. 経産省 動態統計 調査対象事業所1,700のサンプル調査 2,910億円 2024年(統計終了) A

出典:帝国データバンク 業界動向調査(2025年5月16日公表)Fitness Business(2024年5月25日)e-Stat 特定サービス産業動態統計調査 長期時系列表18(2025年3月19日更新)

約2.4倍の開きがあります 7,100億円と2,910億円は、どちらも正しく、どちらも「フィットネス市場」です。前者は企業の売上高、後者はサンプル調査。本レポートでは金額を単独の根拠にしません。

経産省統計で見える唯一確かな事実:コロナ前に戻っていない

統計は終了しましたが、2024年までの実数は残っています。これは市場を語るうえで最も硬いデータです。

売上高会員数年間延べ利用者数調査事業所数
2019(コロナ前)3,348億円336.3万人2億5,451万人1,461
20202,235億円269.0万人1億7,158万人1,583
20212,450億円257.7万人1億9,819万人1,506
20222,683億円264.9万人2億1,042万人1,500
20232,784億円279.9万人2億1,768万人1,603
2024(統計最終年)2,910億円288.2万人2億2,661万人1,700

出典:e-Stat 特定サービス産業動態統計調査 長期時系列表18 フィットネスクラブ(2025年3月19日更新・2024年年間補正反映)。※サンプル調査であり業界総額ではありません。2021年6月分・2024年1月/6月分等で調査対象変更による不連続があります。

読み取れること 2024年の売上高2,910億円は2019年(3,348億円)の86.9%にとどまり、会員数も336万人→288万人で14.3%減のままです。調査事業所数は1,461→1,700と増えているにもかかわらず、です。つまり店舗は増えたが1店あたりの会員は減っているという構造が、統計の中に直接現れています。

パーソナルジム単体の市場規模

これが本題ですが、はっきり申し上げて信頼できる金額は公開されていません

流通している数字出所判定
マンツーマン指導市場 275億円(前年比 +10.8%) ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年下期。15〜69歳・人口20万人以上都市居住・n=13,200の消費者調査 A 調査手法とサンプル数が公開されている唯一の実測値。本レポートではこれを採用します
275〜500億円、年率9〜11%成長 コーチム統合分析(2026年6月) B 推計。幅として参照
約1,000億円(2023年) 複数のまとめ記事で反復されているが、元の調査名を特定できず C 採用不可
700〜800億円(2024年) 一パーソナルジムのブログ。「矢野経済研究所・日本フィットネス協会等の推計」と記載するが名指しがなく検証不能 C 採用不可。上記1,000億円とも矛盾

出典:ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年下期コーチム 市場レポート(2026年6月)

推計値が3倍以上ブレます 275億円から950億円まで、公開されている推計は3倍以上の開きがあります。原因は定義の不統一です(マンツーマン指導のみか、セミパーソナル・通い放題まで含むか)。「市場規模◯◯億円だから参入する」という判断は、この市場では成立しません。判断材料は金額ではなく、後述の店舗分布と収益性に求めるべきです。
矢野経済研究所が2025年に初めて算出しました 「2025年版 フィットネス施設市場の現状と展望」(2025年10月31日発刊)で、パーソナルトレーニングジムを新業態として追加し市場規模を算出しています。ただし数値は有料レポート内(198,000円)で、無料公開されていません。確実な金額が必要な場合、現時点ではこのレポートの購入が唯一の入手経路です。
https://www.yano.co.jp/market_reports/C67114100

3店舗数と出店動向
資金の流れが変わった

金額が当てにならない以上、店舗数の実測が最も信頼できる指標になります。

全国フィットネス施設の業態別内訳

業態2024年8月2025年8月構成比
総数12,54313,876100%
24時間型4,3485,03436.3%
パーソナルトレーニングジム※分離計上なし2,36817.1%
小規模型2,1452,15615.5%
ヨガ型(マシンピラティス含む)1,3341,87713.5%
総合型1,1421,2408.9%
その他3,5741,2018.7%

出典:矢野経済研究所 フィットネス施設に関する調査(2026年3月12日発表/2025年8月時点)

「パーソナルジムが急増した」とは言えません 矢野経済研究所は2025年版で「パーソナルトレーニングジム」を新カテゴリとして分離しました。2024年時点では「その他3,574」に内包されていたため、2,368施設という数字に比較可能な前年値は存在しません。実際、2024年の「その他3,574」は2025年の「パーソナル2,368+その他1,201=3,569」とほぼ一致します。増加率を算出してはいけない数字です。ネット上で見かける「パーソナルジムが前年比◯%増」という記述は、この点を見落としています。

新規出店の内訳:ここに最大の変化があります

業態2023年9月〜2024年8月2024年9月〜2025年8月
新規出店 合計1,1521,266
24時間型826(71.7%513(40.5%
ヨガ型(マシンピラティス)124(10.8%)348(27.5%
パーソナルトレーニングジム※分離計上なし278(22.0%)

出典:矢野経済研究所(2026年3月12日発表)/2024年分は同社2024年10月24日発表

出店マネーの主戦場が移りました 24時間型の新規出店シェアが71.7%から40.5%へ急落し、代わりにヨガ型(マシンピラティス)が10.8%から27.5%へ倍増しています。これは業界の投資マネーが「24時間型の一巡」を認識し、ピラティスとパーソナルへ移動したことを意味します。参入する側から見れば、これから最も競合が増える領域に向かうということです。

主要チェーンの店舗数(規模感の把握用)

ブランド店舗数会員数時点信頼度
chocoZAP(セルフ型・参考)2,0052026年7月A
エニタイムフィットネス(24時間型・参考)1,280120万人2026年7月末A
かたぎり塾(パーソナル)3482026年6月B
BEYOND(パーソナル)1772026年6月B
RIZAP本体1032026年B
24/7ワークアウト962025年12月B
AppleGYM602026年7月B

出典:RIZAP PR TIMESFast Fitness Japan @Press(2026年7月)コーチム 拡大と撤退(2026年)

大手でも純減・撤退が起きています
  • RIZAP:129店(2021年)→ 103店(2026年)=26店の純減
  • チキンジム36店(2024年6月)→ 3店(2026年8月)=約92%減。2025年11月の公式FCページには「複数店舗がFC店舗から独立したため店舗数が減少」と記載。運営元だった株式会社CHICKEN GYMは2025年7月1日に登記が閉鎖され、ブランドは別法人へ移管。公式サイトも全URLが同一の1枚ページを返す状態に縮退しています(2026年8月9日実測)
  • BVEATS:11店(2022年1月)→ 4店(2026年6月)→ 全店閉鎖。運営会社が負債約2億3,000万円で破産
新規出店278店という数字だけを見ると成長市場に見えますが、同時に大手ブランドの店舗が消えています。出店数と純増数は別物です。
店舗数そのものにも幅があります 矢野経済研究所の2,368店に対し、Google Maps起点で推計した「全国5,000〜5,500店」という数字も流通しています(C/出典不明瞭)。矢野は企業へのヒアリング+文献調査のため、個人事業主の1名運営ジムやレンタルジム間借り型を捕捉しにくいという構造的な弱点があります。逆にGoogle Maps推計は閉店店舗や重複を含みやすい。実数は2,400〜5,500の間としか言えません。ご依頼者さまが個人開業を想定される場合、実際の競合はこの上限側に近いとお考えください。

4需要側
誰が、いくら払っているか

供給側の話が続きましたが、参入判断で本当に効くのは需要側の変化です。

市場の重心が女性から男性へ移っています

指標数値時点
マンツーマン指導の女性市場前年比 -23.0%2025年下期
ジム・ヨガ・フィットネスの男性市場前年比 +5.2%(3年連続拡大)2025年下期
ジム・ヨガ・フィットネス市場 全体6,404億円(前年比 -3.9%)2025年下期
男性のマンツーマン指導 月額支出前年から約1,400円減2025年下期
女性のマンツーマン指導 月額平均支出8,650円2024年
女性のマンツーマン指導 1年以内利用率3.5%(20代が最高6.0%)2024年
利用目的(男性2位)筋力アップ 44.0%2025年下期
利用目的(女性2位)ダイエット・体型維持 43.6%2025年下期

出典:ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2025年下期(15〜69歳・人口20万人以上都市居住・n=13,200・毎年12月調査)/同 2024年下期

商品設計に直結する変化です パーソナルジムの標準的な商品は長らく「2ヶ月で痩せる女性向けダイエットコース」でした。しかしその主力顧客層が1年で23%縮小し、代わりに20代男性のボディメイク需要が3年連続で伸びています。従来型の商品設計をそのまま持ち込むと、縮小している側の市場に参入することになります。

参加率:市場全体の伸びしろ

指標数値出典・時点
日本のフィットネス参加率約4.5%RIZAP決算説明資料ほか/2026年
米国のフィットネス参加率23.7%
現在フィットネスクラブを利用中(自己申告)11.3%中小機構 J-Net21/n=1,000・2025年4〜6月
過去に利用経験あり27.7%
一度も利用したことがない61.0%
今後利用したい29.4%

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21(調査期間2025年4月26日〜6月16日・n=1,000・インターネット調査)

解約理由のデータ(やや古い点にご注意ください) パーソナルジムの継続率は18.8%(継続34人/やめた147人)というデータがあります。やめた理由の上位は ①時間がなくなった ②料金が高い ③コロナ禍 ④引っ越し ⑤モチベーション低下。
ただしこれは2021年8月の調査(n=615)であり、コロナ禍の影響を強く含みます。現在の継続率として使うには古すぎます。2022年以降の継続率データは、調査手法を開示した形では見つかりませんでした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000108.000068228.html

5価格
提示価格と実支出の大きな乖離

このレポートで最も注意していただきたい論点です。

公式サイトに掲示されている価格

項目数値備考
2ヶ月16回コースの相場約20〜30万円7ブランド13プランの公式サイト全書き出し(2026年8月)
1回あたり単価 中央値9,680円最安6,600円/最高23,925円
RIZAP ベーシック382,800円327,800円+入会金55,000円
24/7ワークアウト約130,000円入会金無料+16回
月額換算月3〜8万円月2回 約2万円/月4回 約3〜4万円/月8回 約6〜7万円

出典:コーチム 料金調査(2026年8月・公式サイト7ブランド13プランを全て書き出す手法を開示)

同じ「2ヶ月16回」で約3倍の開きがあります RIZAP 382,800円に対し、24/7ワークアウトは約130,000円。同一サービス形態で価格が3倍違う市場です。さらに、調査対象7社のうち4社がブランド内で料金を統一していません(店舗・エリア別)。BEYONDは同一プランで8,800円の店舗間格差があり、かたぎり塾は公式に「店舗ごとに異なります」と表記しています。「相場」という概念が成立しにくい市場です。

実際に消費者が払っている金額

提示価格の1/4〜1/8しか市場に落ちていません 公式サイトの月額相場は3〜8万円。一方、消費者調査による女性のマンツーマン指導の実支出は月8,650円です。

この乖離は、掲示価格が「2ヶ月集中コースの総額を月割り表示したもの」であるのに対し、実支出は「1年を通じて均した実額」だからです。つまり多くの利用者は2ヶ月で離脱し、その後払っていません。前掲の継続率18.8%とも整合します。

参入判断への含意:定価ベースで売上を積算すると、激しく過大な事業計画になります。「客単価30万円 × 月5名 = 月商150万円」という計算は、離脱を前提に置いていないため成立しません。
価格の下方圧力 需要側の希望価格と供給側の提示価格にも乖離があります。中間層の希望は「月1万円未満」が60%との集計があります(B/コーチム 2026年6月)。加えて帝国データバンクは、物価上昇による節約志向で「会費の値上げも難しい」と明記しています。低価格セルフ型(chocoZAP 2,005店)の存在が、価格帯の下限を押し下げ続けています。

課金モデルそのものが移行しています

これは商品設計に直接効く変化です。業界の標準だった「2ヶ月コース一括前払い」から、月額制への転換が進んでいます。

ブランド転換前転換後時期
24/7ワークアウト 2ヶ月16回 257,400円
(入会金あり)
入会金0円・月額制
月4回 33,440円〜/月16回 123,200円
2025年1月1日
RIZAP BASIC=2ヶ月16回
382,800円(入会金込)
PRIMEプランを新設。登録料440,000円+月額制。平均継続20ヶ月で1回単価12,718円(BASICの23,925円の約半額)
ELEMENT 、(当初から月額制) 月額通い放題 43,780円〜。1回30分。平均継続7ヶ月以上

出典:24/7ワークアウト公式 料金ページ(2026年8月9日取得。旧料金体系はHTMLソース内にコメントアウトで残存)/同 新料金体系リリース(2025年1月9日)RIZAP公式 料金プラン/ELEMENT公式(2026年6月)

この転換が意味すること 短期集中コースは、2ヶ月で顧客が離脱することを前提にした設計でした。継続率18.8%・6ヶ月継続63.9%というデータと整合します。しかし高額の一括前払いは購入のハードルが高く、市場が飽和すると新規獲得が止まります。

月額制への移行は、「1人から2ヶ月で30万円取る」から「1人から長く少しずつ取る」への転換です。RIZAPのPRIMEは平均継続20ヶ月で1回単価が半額になる設計で、明確に継続を狙っています。

新規参入で従来型の「2ヶ月16回コース」をそのまま持ち込むと、業界が離脱しつつあるモデルに後発で入ることになります。加えて、一括前払いは§9で述べる特商法・前受金保全の論点も抱えます。

6飽和度
東京と地方で答えが逆になる

「この市場は飽和していますか」という問いには、地域を指定しないと答えられません。

大手8ブランド810店舗の全数調査

指標数値
市区町村カバー率9.6%(全1,741市区町村中 168のみ)
東京都の店舗数399店=全国の49.3%
1都3県579店=71.5%
東京 対 大阪8.1倍
東京 対 愛知13.8倍
出店のある都道府県45/47(島根・鳥取はゼロ)
1ブランドのみの県8県(佐賀・宮崎・山口・徳島・青森・高知・鹿児島・長崎)
レビュー密度の逆転新潟2店=平均147.5件 / 東京399店=平均64.1

出典:コーチム 店舗分布悉皆調査(2026年7月・主要8ブランド810店舗のGoogleマップ住所およびレビュー55,194件を分析)

レビュー密度の逆転が最も示唆的です 東京の1店舗あたり平均レビューが64.1件なのに対し、新潟は147.5件と2.3倍。レビュー数は概ね利用者数に比例するため、これは東京では需要が店舗数に分散して薄まっていることを示しています。

裏を返せば、競合の少ない地域では1店舗あたりの需要が厚いということです。矢野経済研究所も「地方への出店をどこまで進められるかが今後の市場拡大を左右する」と、この点を課題として挙げています。
業界当事者による「レッドオーシャン」の言及 RIZAPグループの分析レポートには、「トレーニング中上級者のしっかりトレーニングしたいという市場はレッドオーシャンと位置付けられる」という記述があります。これは同社がchocoZAPで「初心者のちょいトレ」という別領域へ移った理由の説明として書かれたものです。
つまり業界最大手が、従来型パーソナルジムの領域を自ら赤い海と判断して撤退方向に舵を切ったということです。RIZAP本体が129店→103店へ純減している事実と一致します。
フィスコ RIZAPグループレポート(2026年6月10日)

反証:飽和していないとする立場

公平を期すため、逆の見方も併記します。

ただし、この反証には注意点があります chocoZAPの会員数は135万人(2025年5月・ピーク)→ 110.5万人(2025年11月)と、半年で18%減少しました。会社側は株主優待の無料期間終了・法人トライアル会員の厳格化・出店抑制によるものと説明しており戦略的縮小との位置づけですが、業界最大手の会員数が半年で18%減った事実は、量的拡大の限界を検討する材料になります。(2026年5月時点で116.1万人まで回復)

7収益性
市場は最高益、企業の半数は赤字か減益

このレポートで最も重い事実です。

48.8%

黒字

15.9%

減益

31.7%

赤字

47.6%

業績悪化(減益+赤字)

出典:帝国データバンク「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査(2024年度/約80社対象/2025年5月16日公表)

店舗は10年で2.3倍、市場は過去最高、しかし企業の約半数が赤字か減益 主要大手15社の店舗数は約3,000店(10年前)→ 4,387店(2020年度末)→ 約6,500店(2024年度末)と2.3倍に増えました。市場規模も過去最高の約7,100億円を更新見込みです。それでも約80社のうち47.6%が業績を悪化させています。

帝国データバンクは要因として次の3点を挙げています。
  • 建設費高騰による出店投資負担の増大
  • トレーナー人件費の上昇
  • 低価格コンビニジムの台頭による顧客獲得競争の激化

倒産の状況

指標数値時点
フィットネスクラブ倒産件数28件(1998年の統計開始以来 過去最多)2023年度(4月〜2月)
前年度16件2022年度
原因「販売不振」71.4%
負債1億円以上7件(前年同期2件)

出典:東京商工リサーチ(2024年3月7日公表)

この数字にも限界があります 東京商工リサーチの倒産統計は「フィットネスクラブ」区分であり、パーソナルジム単体の内訳は公表されていません。また2024年度以降の集計は今回の調査では取得できませんでした。パーソナルジムの倒産件数・廃業率を継続して集計している統計は、公的・民間を問わず存在しません。「廃業率◯%」という記述をネット上で見かけますが、原典に到達できるものはありませんでした。

個別の倒産事例(社名・負債額が公表されているもの)

統計がない以上、個別事例から構造を読み取るしかありません。2024年以降で社名を特定できたものを挙げます。

運営会社/ブランド時期負債額背景
BVEATS(通い放題パーソナルジム/恵比寿・代官山・渋谷) 2026年6月29日
破産申請
約2億3,000万円 売上 4億168万円(2022年11月期)→ 1億2,000万円(2025年11月期)。2023年11月期に債務超過1億3,141万円。会員最大約1,000名
スタジオ・ヨギー(株式会社ヨギー/ヨガスタジオ20店舗超) 2025年8月1日
破産手続開始
約6億2,000万円 ピーク売上19億3,942万円(2018年12月期)。債権者約2,500名のうち約2,200名が一般利用者
オーパス(富山・滋賀のフィットネスクラブ) 2026年5月1日
破産手続開始
約8億2,300万円 2023年4月の死亡事故による信用失墜+競合激化。債権者353人
ROUTINE Fitness24(株式会社モリヨシ) 2025年7月
自己破産準備
約15億円 本業(インテリア用品卸)の破綻に伴いジム事業も閉業

出典:東京商工リサーチ速報(2026年7月1日/BVEATS)同(2025年8月4日/ヨギー)/オーパスは帝国データバンク調べを各社報道が引用(2026年5月)/モリヨシはJC-NET(2025年7月24日)。※ヨギーの負債額は会社発表のFAQでは約7億6,014万円(調査中)とされており、集計時点により異なります。

BVEATSの事例が最も示唆的です 「通い放題パーソナルジム」という、まさに現在の主流である月額サブスク型の業態です。都心一等地(恵比寿・代官山・渋谷)に出店し、3年で売上が4億円から1億2,000万円へ7割減しました。破産原因は「大手の低価格ジム展開による競争激化」とされています。

都心の家賃と通い放題の単価設計が両立しなかったという読み方ができます。§6でご覧いただいた「東京は飽和・地方は未開拓」という構造と、同じことを別の角度から示している事例です。
消費者被害の観点 スタジオ・ヨギーの破産では、債権者約2,500名のうち約88%が一般利用者でした。回数券や前払い分は破産債権となり、全額は戻りません。これは次章(法規制)で述べる「前受金保全措置の対象外」という論点と直結します。

8開業コストと損益分岐点
数字の出所に強い偏りがある

この章の数字は、他章と性質が違います。読む前に必ず次の注意をお読みください。

この章の数字は、ほぼ全てが「売る側」の発信です 初期費用・利益率・損益分岐点について、独立した第三者統計は存在しません。見つかる数字は例外なく、内装業者・トレーニング機器販売会社・開業コンサル・トレーナースクール・フランチャイズ本部・予約システムベンダーのいずれかが発信元です。

実際、内装の坪単価は出典によって12万円から80万円まで約8倍の開きがあります。同じ「居抜き10坪」で、ある内装業者は「坪12〜35万円」、別の内装業者は「坪35〜55万円」と書いています。どちらも内装業者の集客メディアです。

以下、出所の立場を必ず併記します。

初期費用の合成レンジ

複数出典を積み上げた合成値です(単一出典ではありません)。

開業形態物件取得内装機器その他合計
マンション一室・内装DIY寄り(1名)30〜90万0〜80万50〜100万20〜50万150〜320万円
マンション一室・業者内装(1名)50〜120万50〜150万80〜150万30〜80万210〜500万円
10坪テナント・居抜き(シャワーなし)100〜250万150〜350万100〜200万50〜120万400〜920万円
10〜20坪・スケルトン(シャワー・更衣室あり)150〜350万400〜1,000万150〜400万80〜200万780〜1,950万円

合成の元にした主な出典:淀川パートナーズ(士業/2025年12月)、2ndPASS(トレーナースクール・自社卒業生の平均値/2025年10月)、店舗内装.com(内装業者/2026年7月)、店舗設計施工.com(内装業者/2026年版)、創業融資サポート(士業/2026年6月)ほか

検証しやすい数字もあります 機器については、販売店の実売価格が公開されているため検証できます。たとえばジムガレージの「パーソナルジム開業セット」は55万円〜79万7,500円(税込)、IROTECのパワーラックは9万9,990円、アジャスタブルベンチは4万4,000円。業務用トレッドミルは新品53万円に対し、中古のライフフィットネス95Tiが22万円(定価約150万円)という実例があります。有酸素マシンは中古で新品定価の1/5〜1/7まで下がります。
ジムガレージ 開業セットスーパースポーツカンパニー(IROTEC)(いずれも2026年8月時点)

シャワーを付けるかどうかで100〜200万円変わります

工事費用
床:ゴムマット(置き敷き)坪1〜3万円
床:ゴムチップ(接着施工)坪3〜6万円
床:防振浮き床(二重床構造)坪5〜12万円
防音:壁 / 天井坪2〜5万円 / 坪1〜3万円
シャワーブース1台15〜40万円
更衣室造作 / ロッカー10台20〜60万円 / 10〜30万円
排水管の口径増強10〜30万円

出典:店舗内装.com(2026年7月30日最終更新)/内装業者。給排水は後付けほど割高になるため、将来設置の可能性があれば配管だけ先に通すのが定石とされています。

月次ランニングコスト

費目都心(23区・10〜15坪)郊外・地方都市根拠の質
家賃20〜40万円8〜18万円中(賃料統計は堅い)
人件費(雇用時/オーナー分を除く)正社員20〜34万円同左低(バック率の出典が割れる)
広告宣伝費10〜30万円5〜15万円低(すべて代理店発)
水道光熱費2〜5万円1〜3万円
予約・会員管理システム0円〜3.5万円高(ベンダー公式価格)
月次合計約30〜80万円約17〜40万円

賃料は三鬼商事データ(2026年4月時点/東京都心5区 坪22,454円・大阪13,126円・福岡12,467円・仙台9,662円)。システムはhacomono公式(基本プラン 初期15万円+月額3.5万円/店舗)ほか。人件費・広告費は業界メディア・代理店発。

この章で最も重要な数字

公的機関の実測では、平均営業利益率はマイナスです 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2024年8月実施、フィットネスクラブ74社)の実測値です。
指標平均中央値黒字企業の平均
営業利益率-11.1%-5.5%6.7%
損益分岐点比率114.5%107.2%98.8%
自己資本比率-43.3%-12.5%18.1%
一人当たり人件費333.7万円309.4万円314.5万円
損益分岐点比率114.5%とは、平均的な事業者が損益分岐点を下回っているということです。黒字企業だけを取り出しても営業利益率は6.7%にとどまります。

出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2024年8月実施・n=74社)/引用元:税理士法人Accompany(2025年6月30日)

開業支援業者の数字との乖離 開業コンサル・機器販売会社の収支シミュレーションは、利益率を30〜52%と提示しています(例:ある開業支援会社のシミュレーターは「月商193万円・月間利益101万円・利益率52%」)。

一方、公庫の実測は平均-11.1%、帝国データバンクは赤字31.7%・業績悪化47.6%です。

この乖離は、モデル試算が「集客コスト・空室期間・解約・オーナー自身の労働対価」を十分に織り込んでいないために生じます。利益率40%を超えるモデルは、オーナーの人件費が費用計上されていない可能性が高いとお考えください。事業計画は公庫・TDBの実測を基準線に置き、業者シミュレーションは上振れシナリオとして扱うのが妥当です。

損益分岐点と、物理的な受入上限

項目数値出所の立場
損益分岐会員数(固定費50万円・月単価3万円)約17名ジム運営会社
損益分岐会員数(大阪・30坪・月会費2.8〜3.8万円・初期300万円)約30名業界誌 Fitness Business(2021年)
1日の最大セッション数(10-22時・日曜定休)9セッション、(時間からの機械計算)
月間の新規受入 現実値(コホートの重複を考慮)13〜14名トレーナー人材紹介会社
顧客が会社員中心の場合(平日夜4枠のみ)約6名/月同上

出典:Fitness Business(2021年2月16日/やや古い)トレーナーエージェンシー(人材紹介会社)/ELEMENT(2026年4月28日更新)(ジム運営会社)

1人運営には物理的な天井があります 1日9セッションが上限で、月間の新規受入は現実的に13〜14名。これは努力や集客力では超えられない制約です。売上を伸ばす手段は「単価を上げる」「トレーナーを雇う」の2つしかなく、後者を選ぶと人件費率30〜45%が乗ります。「月商150万円以上・トレーナー2〜3名」が雇用検討の目安とされています。

継続率:事業計画の前提として最も重要な数字

経過期間継続率
1ヶ月99.5%
3ヶ月85.6%
6ヶ月63.9%
1年44.0%
2年26.7%

出典:コーチム「ジム継続率調査2026」(n=196・調査手法とサンプル数を開示)。同調査は「従来の業界数値は4%〜98%とばらつき、期間定義がなく事業者発が多い」と自ら指摘しています。運営元はジム比較サイトのため一定のポジション性がありますが、n数と手法を開示している点で相対的に良質です。

同調査から、商品設計に直結する2つの発見
  • 目標を達成した人は8.7%のみ。1年以内の離脱が56%。離脱理由はモチベーション低下48.1%が最多で、費用負担16.5%を大きく上回ります。価格を下げても離脱は止まらないということです。
  • ジム選定の基準は「通いやすさ」51.5%に対し「トレーナーの質」1.0%。この差は50倍以上です。指導品質は選ばれる理由にならず、続ける理由にしかなっていません。立地が事業の成否をほぼ決めます。
  • 現会員の81%が1年超在籍。「半年以内に辞める層」と「長期定着層」に二極化しており、平均値で語ると実態を見誤ります。

9法規制と事故リスク
参入前に必ずお読みください

当初の調査設計にはなかった論点ですが、調査の過程で参入判断を左右しうる一次情報が見つかったため、章を追加しました。

2026年5月、消費者庁がパーソナルトレーニングの事故調査報告書を公表しました 消費者安全法23条1項にもとづく消費者安全調査委員会の事故等原因調査報告書(全62頁)です。この業界に参入するなら、必ず原文をお読みください。
消費者事故等調査報告書「パーソナルトレーニングにおける事故」(2026年5月27日公表)

事故の実態

項目数値
事故情報データバンク登録件数(2019年1月〜2025年12月)196件
2022年以降の年間発生毎年30〜45件程度
治療1ヶ月以上を要したもの81件(41%)
負傷部位:腰・股関節 / 膝・足59件(30%) / 44件(22%)
器具との偶発的接触・器具取扱いミスによるものわずか3件
指導そのものに起因するもの193件

出典:同報告書 p36。前身データとして、国民生活センターのPIO-NETに2017年度以降5年間で105件の危害相談があり、4人に1人が治療1ヶ月以上(神経・脊髄損傷、筋・腱損傷を含む)。国民生活センター(2022年4月21日)

事故の性質が決定的です 196件のうち、器具の偶発的接触や取扱いミスはわずか3件。残り193件は「指示された種目を実施してケガ」「負荷が重かった」「指導が不適切」です。

報告書には、消費者が「限界です」「膝がこわい」「無理」と伝えたのに、トレーナーが「ここを乗り越えないといけない」「大丈夫」と強引に勧めて負傷した事故が登録されています。腰痛のある方に初対面のトレーナーがバーベルスクワットを提示した例、過負荷のデッドリフトで腰椎・仙椎を骨折した例も記載されています。

これは「事故が起きた」ではなく「指導のあり方そのものが事故の原因」という認定です。設備投資や保険では解決しません。

事業者側の備えの実態(トレーナー582名アンケート)

項目数値意味
賠償責任保険に加入していない18%(107名)「わからない」も16%(91名)
契約書(業務内容・利用規約)を交付している62%4割弱が未交付。紛争時に極めて不利
事故リスクの説明を実施している65%説明義務違反のリスク
業務フロー・マニュアルが「ない」22%「分からない」も8%
事故時の業務フローが「ない」12%
顧客の最多目的ダイエット40%痩身訴求=景表法リスクと直結

出典:同報告書 p24-25

裏を返せば、ここが差別化になります 3分の1以上の事業者が賠償責任保険に入っておらず、4割弱が契約書を交付していません。保険加入・契約書交付・事故時フローの整備は、それ自体が競合との差になります。コストはいずれも小さく、参入時に最も費用対効果の高い投資です。

資格・業規制はほぼ存在しません

「現行法令上、パーソナルトレーニングを提供するために特定の国家資格を要するものではない」(同報告書 p22-23)

フィットネス分野に国家資格はなく、民間資格だけで100以上存在します。1日講習で取得できるものから、四年制大学の体育学部卒が受験要件のものまで水準が大きく異なります(p34)。事業者横断的な事故情報の収集体制も「確認できていない」とされています(p35)。

参入障壁が低いことは、参入する側には有利ですが、同時に競合も同じ条件で入ってこられることを意味します。

規制が新設される可能性

調査委員会は4大臣・長官に意見を出しています 経済産業大臣・文部科学大臣・厚生労働大臣・消費者庁長官の4者宛て(同報告書 p61)。経産大臣への意見は、業界団体に対し ①トレーナーに共通して求められる知識・技術・経験 ②ヒューマンエラー防止手順 ③消費者が中止を申告しやすい環境づくり ④トレーナーの育成・管理 ⑤事業者横断的な事故情報の収集 を中心とする仕組みの創設・運用を促すこと、というものです。

現時点では業界団体の自主基準として求める段階ですが、自主対応が進まなければ法規制化へ向かうのが典型的な経路です。今後3〜5年で、トレーナーの資格要件・事故報告義務・書面交付義務などのコンプライアンスコストが上乗せされる前提で事業計画を組むことをおすすめします。

特定商取引法:適用されないことがリスクになっています

「2ヶ月コース一括前払い」という標準的な商法について、特定継続的役務提供に該当するかを条文レベルで確認しました。

役務(政令別表第四)期間要件金額要件
一 エステティック / 二 美容医療1月を超えるもの5万円超
三 語学教室/四・五 学習塾/六 パソコン教室/七 結婚相手紹介2月を超えるもの5万円超

出典:e-Gov 特定商取引に関する法律施行令 別表第四(条文原文で確認)

パーソナルジムは原則として非該当です エステティックの政令上の定義は「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」。運動指導は「施術」に当たらないため、文言上は非該当です。前掲の消費者庁報告書がパーソナルトレーニングの関連制度を網羅的に洗い出しながら、特定商取引法への言及を一切していないことも、これを裏づけます。

つまり法定のクーリング・オフ権も中途解約権も原則として発生しません。短期的には事業者に有利ですが、これは消費者保護の空白地帯であり、規制新設圧力の震源です。

また、前受金の保全措置の対象外でもあります。倒産時に会員の前払金(平均約17万円)が保護される法的枠組みがありません。倒産28件のすべてが資本金1億円未満だったという事実と組み合わせると、消費者被害が顕在化しやすい構造です。
該当してしまうケースがあります 痩身マシン・EMS・キャビテーション等の「施術」を併せて提供する場合は、エステティックに該当し得ます。その場合、期間要件は1ヶ月超(2ヶ月超ではありません)、金額要件は入会金・関連商品・教材費を含めた総額5万円超です。2ヶ月16回コースはほぼ確実に両要件を満たします。

「エステは無料サービス」という建て付けにしても、消費者庁のQ&Aは契約の実態を見て一体の契約なら規制対象としています。

なお、パーソナルジムを名指しした消費者庁の公式見解は見つかりませんでした。「該当しない」と断言していたのは事業者自身の特商法表記ページであり、一次情報ではありません。痩身訴求+2ヶ月一括前払いという構成は、争えば負ける可能性のある領域とお考えください。

景品表示法:ビフォーアフター訴求の直撃領域

項目内容
不実証広告規制優良誤認が疑われる表示について、合理的根拠資料の提出を15日以内に求められ、出せなければ不当表示とみなされます(景表法5条1号・7条2項)
課徴金対象役務の売上額の3%。10年以内の再違反は4.5%(8条)
ステルスマーケティング規制2023年10月1日より、事業者の表示と判別困難な表示が違反に。SNS投稿・レビュー投稿が対象
直近の執行事例2026年3月25日、エステティックサロン運営事業者3社に措置命令(景表法5条2号・有利誤認)

出典:消費者庁(2026年3月26日公表)消費者庁 ステルスマーケティング規制

この業界の中核訴求が、そのままリスクです 「ビフォーアフター写真」「◯kg減」「体験談」は、いずれも不実証広告規制の対象です。効果の合理的根拠(試験・調査データ)を事前に保持していないと、15日以内の提出要求に応じられません。「これから集める」では間に合わない設計になっています。

顧客の最多目的がダイエット40%であることを踏まえると、痩身効果の訴求は避けられない一方、それが最大の法的リスクでもあるという構造です。

建築基準法・消防法(小規模なら大半は不要)

法令内容10〜20坪での結論
建築基準法パーソナルジム=「スポーツの練習場」=特殊建築物。用途変更の確認申請は床面積200㎡超で必要(法87条1項・6条1項1号)20坪=約66㎡のため不要
消防法(防火管理者)(十五)項「前各項に該当しない事業場」に区分。収容人員50人以上で選任義務通常は不要
消防法(消火器具)(十五)項は延べ面積300㎡以上で設置義務通常は不要

出典:e-Gov 建築基準法施行令115条の3第2号e-Gov 消防法施行令 別表第一(条文原文で確認)

ただし2つ注意点がありますテナントビルに入居する場合は、建物全体で「複合用途防火対象物」(十六項)として判定され、義務が発生することがあります。② 最終的な用途区分の判定権限は所轄消防本部にあります。入居前に必ず所轄消防へご確認ください。

なお、プロテイン等の飲食物提供時の食品衛生法上の届出、シャワー設置時の公衆浴場法の該当性については、今回の調査では一次情報で確認できませんでした(詳細は次章)。

契約トラブルの発生状況

項目数値
相談件数(2018→2020→2023年度)3,794件 → 7,317件 → 3,249件
平均契約購入金額約17万円
契約当事者女性が約7割。年代は男女とも40歳代が最多
100万円以上の契約75件(1.6%)

出典:国民生活センター「スポーツジム等の契約トラブルにあわないために」(2024年1月24日/PIO-NET 2023年12月31日登録分)

典型的なトラブルは、①キャンペーン契約の中途解約で違約金請求(利用開始前でも2万5,000円請求された事例)②解約手続き済みのはずが引落継続 ③体験プラン終了後の通常プランへの自動更新 ④無人ジム・オンラインで事業者と連絡がつかない、の4類型です。特商法の適用がない以上、これらはすべて契約自由の原則で処理されます。消費者に法定の解約手段がないことは、相談の積み上がりを通じて規制新設の圧力になり、またレビュー・SNSでの評判毀損に直結します。

10フランチャイズ加盟条件の比較

独立開業ではなくFC加盟も選択肢に入る場合の材料です。ここも数字はすべて本部の自己申告であり、第三者検証はありません。

ブランド加盟金ロイヤリティ初期投資総額備考
ELEMENT220万円売上の10%900〜1,400万円内訳まで開示。透明性が最も高い
ティーバランス200万円月16.5万円(定額)365〜415万円別途システム5.5万+広告27.5万=月49.5万円
かたぎり塾165万円(二次情報)20〜25%(二次情報)560〜665万円(二次情報)公式は自己資金100万円以上・想定月商170万円以上のみ開示
OUTLINE無料(キャンペーン)売上の15%300〜600万円保証金100万円(解約時返金)
eviGym200万円(税別)売上の25%500〜1,000万円業界内でも最高水準の料率
HPER100〜150万円年132〜165万円303.5〜353.5万円自己資金100万円〜
BEYOND非開示非開示約1,500万円〜加盟金・保証金・研修費・ロイヤリティ・広告分担金・契約期間の6項目すべて非開示
chocoZAP(参考・セルフ型)220万円実質15%2,000〜2,200万円契約7年・法人のみ。7年ごとに設備入替(加盟店負担)

出典:ELEMENT公式(2026年4月29日)T-BALANCE公式かたぎり塾FC公式+NEXT BUSINESS(2025年6月4日・二次情報)/OUTLINE公式(2025年9月24日更新)eviGym公式BEYOND公式chocoZAP公式

ロイヤリティは「率」だけを見ると判断を誤ります 料率型(ELEMENT 10%/OUTLINE 15%/かたぎり塾 20〜25%/eviGym 25%)と定額型(ティーバランス 月16.5万円/HPER 月11〜13.75万円)は、性質が正反対です。定額型は月商が伸びるほど有利、料率型は月商が低いときに耐えられます。

さらに、ロイヤリティ以外の月額固定費を見落とすと収支が崩れます。ティーバランスはロイヤリティ16.5万+システム5.5万+広告27.5万=月49.5万円が本部支払いです。想定月商180万円に対し27.5%が本部に流れる計算で、料率25%のeviGymと実質同水準になります。
「想定営業利益」の定義が本部ごとにバラバラです ティーバランスは月商180万円に対し営業利益125万円=利益率69%としていますが、これは家賃・オーナー人件費がほぼゼロ(=オーナー1人稼働)の前提と読めます。chocoZAPは「償却前営業利益」と明記しています。

利益率が40%を超えるモデルは、オーナー自身の労働対価が費用計上されていない可能性が高いとお考えください。前章の公庫実測(平均-11.1%)との差は、ここから生じています。

また、投資回収期間の開示は「最短」「1店舗の実績」ベースがほとんどです(BEYOND=つくば店の6ヶ月、OUTLINE=最短3ヶ月、ティーバランス=最短5ヶ月)。平均値・中央値・分布は、どの本部も一切開示していません。
FC条件の透明性そのものが判断材料になります ELEMENTは加盟金・ロイヤリティ・初期投資の内訳まで開示している一方、BEYOND(177店・業界2位)は核心6項目をすべて非開示としています。BEYONDの「初期投資1,500万円/2,500万円」「営業利益600万円/800万円」は同社関連情報のなかでも数値が割れており、営業資料上の参考値として扱うべきです。

なお、BEYONDが訴求する「店舗CLOSE実績ゼロ・撤退企業ゼロ」は本部の自己申告であり、第三者による店舗生存率の検証は存在しません。急拡大中のFCでは、生存者バイアスが構造的に生じます。
FC比較サイトの数値に、生成AI由来と見られる誤りが混入しています 調査の過程で、あるFC比較サイトがFURDIの開業資金を「4,000〜8,000万円」と記載しているのを確認しました。本部公表値は「2,500万円〜」であり、大きく乖離しています。同サイトは公開日・更新日を一切記載していません。

日付と出典が明示されていないFC比較サイトの数値は使わないでください。本レポートでは該当箇所を採用していません。

11調べたが「データがなかった」項目

見つからなかったことを書かないレポートは、読み手に「調べ尽くした」という誤解を与えます。当方は必ず明示します。

調査項目結果
パーソナルジム市場規模の一次情報による金額データなし。矢野経済研究所が2025年版で初算出したが有料レポート内(198,000円)
パーソナルジム市場規模の年次推移・予測データなし
2025年以降の官庁統計によるフィットネス売上高・会員数データなし。経産省調査は2024年12月で終了、総務省の後継調査は業種別非公表
パーソナルジムの廃業率・倒産件数の公式集計データなし。TDB・東京商工リサーチともパーソナルジム単独の公表なし
パーソナルジムの平均利用期間・男女比・年齢構成データなし。流通している数字はいずれも原典未確認
2022年以降の継続率データなし。確認できたのは2021年8月調査(継続率18.8%)のみ
FIA(日本フィットネス産業協会)の公表統計データなし。公式サイトに統計ページ・PDFを確認できず。ネット上の「FIA調べ」は原典未確認
富士経済のフィットネス/パーソナルジム市場調査データなし。同社リリース・検索とも該当なし
帝国データバンク業界動向調査の2025年度版データなし。2026年公表分をTDBサイトで確認できず
初期費用・利益率・損益分岐点の第三者統計データなし。見つかる数字はすべて内装業者・機器販売・開業コンサル・スクール・FC本部の発信。例外は日本政策金融公庫の経営指標調査のみ
パーソナルジムの3年生存率・廃業率データなし。「3年で半数が撤退」という記述は管理システム販売元の無出典の主張で、統計的裏付けを確認できず
新品と中古の割引率を明示した一次データデータなし。同一販売店の新品・中古価格の並列比較から逆算するしかない
「パーソナルジム」のキーワード実測CPCデータなし。広告代理店による「500〜1,000円」というレンジ提示のみ
ホットペッパービューティーの実際の掲載料金非公開。プラン名6段階と「売上の2%手数料」のみ判明
プロテイン等の提供時の食品衛生法上の届出、シャワー設置時の公衆浴場法の該当性未検証。一次情報で確認できず。参入前に保健所へのご確認をおすすめします
BEYOND のFC条件(加盟金・保証金・研修費・ロイヤリティ・広告分担金・契約期間)本部が非開示。6項目すべて
2024年度以降のフィットネスクラブ倒産件数データなし。東京商工リサーチの業種別調査は2023年度版が最新
この章に、調査の限界も記します 本調査ではWeb検索の実行回数が上限に達したため、一部の項目で探索を打ち切っています。特に倒産事例の網羅性は保証できません(社名を特定できたのは3件のみ)。また、FC本部の非開示項目については、資料請求・個別面談によってのみ入手可能です。

実際のご依頼では、この段階で「追加調査が必要な項目」としてご提示し、優先順位をご相談したうえで次の調査に進みます。
引用時のご注意(そのまま社内資料にお使いいただけます)
  1. 「フィットネス市場7,100億円」「4,886億円」「2,910億円」を混ぜないでください。それぞれ帝国データバンク(事業者売上高)、Fitness Business(民間商業施設)、経産省(サンプル調査)で、定義が異なります。
  2. 「パーソナルジム市場1,000億円」は使わないでください。原典が特定できません。
  3. 2025年以降のトレンドを官庁データで語ることはできません。統計が2025年1月に断絶しています。
  4. 店舗数は矢野経済研究所の2,368店(2025年8月)が現時点で最良の数値です。ネット上の5,000店超は根拠不明です。
  5. パーソナルジムの前年比増減は算出できません。2025年に新カテゴリとして分離されたため、比較可能な前年値が存在しません。

12出典一覧

本レポートで参照したすべての情報源です。信頼度区分ごとに整理しています。

A 官庁統計・調査手法開示ありの一次発表

B 民間集計・手法一部開示/企業IR

C 原典に到達できず、本レポートで採用しなかったもの